管理職の「傾聴」と「フィードバック」が組織を強くします。今回は後編「フィードバック」。
効果的なフィードバックの3つのコツを解説します。
スタッフの真の課題を掴むためには「傾聴」が重要であることは前回のコラムで触れました。
傾聴により、
・感情の整理
・自身の悩みの本質や問題への気づき
・信頼関係の向上(心理的安全性)
などが促進されます。
その「傾聴」によって得られた気づきや課題に対して効果を発揮するのがフィードバックです。
フィードバックは一般的に上司から部下の気づきを促進し自発的な成長につながる機会を提供するものです。簡単に言えば、考えるキッカケを作るということになります。
フィードバックは相手に対して「私からはこう見えていますよ」といった、見た・聞こえた・感じたことの主観を伝えるものです。
重要なのは、「 You(あなた)」でもなく「 We(私たち)」でもなく、「 Ⅰ(私)」からの「 Ⅰメッセージ」を伝えることです。
「私からはこう見えた」「私は〇〇の方が良いと感じる」などです。
あくまでも自分の意見を伝えます。そのことによって、相手に考える機会を提供するのです。
You メッセージや We メッセージは決めつけや押しつけがましい印象になるので、主語を省略しないでしっかり伝えましょう。
褒めたり感謝を伝えたり、時にはできていないことを伝えるフィードバックは、相手(部下)の成長を後押しする伝える側(管理職)からの贈り物であると思います。
1.事実と解釈を切り分けて伝えましょう
フィードバックはまずは具体的に事実を伝えます。ネガティブな事実であったとしても言葉を濁さずに事実を伝えます。その後に自分の解釈を伝えます。
例)「患者の〇〇さんから口調が厳しいので担当を変えて欲しいという相談がありました。〇〇さんも我儘なところがあるのでそんなに気にしなくてもいいと思うけど気を付けてね。」
このように言葉を濁してしまうとフィードバックの意味を成しません。
「患者の〇〇さんから口調が厳しいので担当を変えて欲しいという相談がありました。どういったやりとりがあったのか教えてください。」「それに対して私は〇〇思うので〇〇の対応をしましょう」など、患者さんが言った事実を伝え、自分の解釈を伝えましょう。
2.相対評価ではなく、絶対評価か過去の自分との比較をしましょう
成果や成長を図るときは、誰かと比較した伝え方はNGです。課題や役割に対してできているかできていないかの絶対評価を伝えるか、相手の過去の結果や行動と比較をしてどの部分ができていて(成長していて)、何ができていないのかを伝えましょう。そうすることで自身の成長が分かりやすくなります。
3.ポジティブフィードバック ・ ギャップフィードバックのコツ
あまり褒めるのも良くないと思われている方もいるようですが、ポジティブフィードバックは積極的に伝えましょう。「いつも頑張っているね」などの抽象的な褒め言葉は成長にはつながりにくいので、褒めるときはどの辺が良かったと感じたのか具体的に伝えましょう。
ギャップフィードバックには軽いものと重いものがあります。
軽いものはあるべき姿から逆算して、何が出来ていないのか、もしくは不足なのかという気づきを与えて成長を促すものです。
重いものは、改善要求です。「こうして下さい」と伝えるものです。
ギャップフィードバックをするときは重苦しい雰囲気になる場合があるので、まずはアイスブレークを入れ、問題や課題の目線合わせをし、それに対してなぜそうなったのか「傾聴」をしましょう。その上で改善策をヒアリングし、いつからどのように行動するか話しましょう。
決して負の感情を表出したり、詰めたりしてはいけません。感情的なダメ出しは防護規制が働き、委縮させ成長を妨げます。
ギャップフィードバックを行うときは、良いところもきちんと伝えながら話をし、終始ネガティブな面だけを伝えるのは避けましょう。
すぐにできる策として、
・最近元気がない、ミスが目立つ、などいつもと違うと感じたら、話をする機会をセットアップする
・1on1など、定期的な面談の機会を設けておく
・管理職に聴く姿勢のマインドセットを持ってもらう
などがあげられるのではないでしょうか。
話しやすい雰囲気、話しても大丈夫という気持ちを作っていくには、傾聴とフィードバックのサイクルを日頃から回し続け、コミュニケーション文化の醸成を作っていくことが重要です。
そうすることで、管理職側とスタッフ側の行き違いを防いだり、小さな課題に気づいたりすることができ、問題の芽を早期に摘むことに繋がります。
傾聴とフィードバックで、管理職側はスタッフの成長を後押しし、スタッフ側も成長を感じられる組織に変わっていく。そういった地道な取り組みが案外、職場を強くする近道ではないかと考えています。